数学書紀

応用数学と、読書記録。

ビット配列の作成

長さ nのビット配列(ビット列)とは例えば、 n=2のとき、

 \{0, 0\}, \{0, 1\}, \{1, 0\}, \{1, 1\}

といったように、要素数 n個になるような0と1の組合せ全てにわたる集合である。(離散数学の分野では、 \mathbb{B}^nに含まれるベクトル、ということになる。この集合 \mathbb{B}の名前を何と言ったっけか…。ちなみに \mathbb{B}=\{0, 1\}である。)

 

MathematicaにはTuplesという組み込み関数が存在する。

reference.wolfram.com

Tuples[list,n]

list 中の n 個の要素からなるすべての可能な集合のリストを生成する.

 

これはべき集合を考えるときにも重要で、要素数 nの集合のべき集合を得るには、長さ nのビット列(の集合)を用意し、 i番目が1となっているような要素をもとの集合から選んでくれば、それはべき集合となる。

もっとも、Mathematicaにはべき集合を求める関数が存在しているが…。

 

ところで、C言語Javaでべき集合を求めたいとなると、このビット列の考えが必要となる。ビット列を生成するには、0から 2^nまで順に2進数変換し、桁ごとに2次元配列に組み込んでいけばよい。

【読書録】宇宙創成(上)

サイモン・シン『宇宙創成(上)』を読み終えた。

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

 

 プトレマイオスの天動説から、コペルニクスガリレオらによる地動説への大転換。

科学は理論と実験(観測)が表裏一体となって進展していくものだと、そのドラマに感動。何事もなさそうな小さな発見が、これまでの天文学を覆す大理論の支えになる。一気に読み進めてしまって、こんな知的好奇心をそそられる本はめったにない。

特に好きなものを2つ。

単純なものこそ真理

天動説を支持しようとすると、周転円を加えたり、惑星は複雑な運動をしているという仮定が必要になる。しかし地動説であれば、「惑星は太陽の周りをまわっている」の一言で惑星の逆行現象などが全て説明できてしまう。(なお、観測による結果と精密に合わせるには、楕円運動をしていることに気付かなければならないのだが…それはケプラーまで待たれる)

巨人の肩の上に立った巨人

井戸を掘って地球から太陽までの距離が分かった。

太陽の直径が分かった。

地球から月までの距離が分かった。

視差を利用して、恒星までの距離が分かった。

セファイド変光星の規則性を調べることで、恒星の明るさと距離の関係が分かった。

それにより、多くの星雲だと思われていたものが銀河だと分かった。

ドップラー効果を利用することで、銀河は銀河系から遠ざかっていることが示された。

 

この一連の大発見の上に、ハッブルは最後の「ハッブルの法則」と呼ばれる理論を発表した。この理論立てて問題を解決していくさまは、まさに科学そのものと言ってよいと思う。宇宙という壮大なスケールを相手に、これからの発展が楽しみである。鉄は熱いうちに…ではないが、さっそく下巻を読もう。

還元公式の話

三角関数の還元公式と呼ばれる以下の公式(一部)がある。

   \begin{align} \sin(\pi - \theta) = \sin \theta \\\\ \cos(\pi - \theta) = -\cos \theta \\\\ \sin(\frac{\pi}{2}- \theta) = \cos \theta \\\\ \cos(\frac{\pi}{2} - \theta) = \sin \theta \\\\ \end{align}

覚えているに越したことはないが、数IIを学習していると加法定理から導けるため、覚えなくとも特に支障はなさそうである。

ところで、「円に内接する四角形の向かい合う内角の和は180°」という性質がある。これに還元公式を適用すると、

「円に内接する四角形の向かい合う内角の \sinは等しい」

と言える。 \cosなら向かいは -\cos

どの形が覚えやすいかは人それぞれだが、センター対策の授業を何度も繰り返すうちにこう教えるのもアリかなと思えてきた。ちなみにこの「等しい」を覚えると、なぜか \sin(\frac{\pi}{2}- \theta) = \cos \theta も覚えられる。

教えることで学べることも多いんだなあ。

コーシー・リーマンの関係式

教科書・参考書

複素関数論を思い立って勉強し(ようとし)た。まず参考にしたのは、最近(というほどでもないか…)出版された涌井貞美『道具としての複素関数』(日本実業出版社) 。

道具としての複素関数

道具としての複素関数

 

 実は発売日から丸善に並んでいて気になってはいたものの、買うまではいかず。。春休みで急に暇になったので、思い切って購入。しかしまだ出版間もないため、結構間違いがある。

 (x^n)'=(n-1)x^{n-1} なんて平気で書いてあったりする…。最低限の知識は持っているにこしたことはありません。

もう一冊、神保道夫『複素関数入門』。

複素関数入門 (現代数学への入門)

複素関数入門 (現代数学への入門)

 

 複素関数論の授業をとったときに参考書としてあげられていたので購入。のあとほとんど読まなくなってしまった。上の本で一通り複素関数の雰囲気を味わったら、こちらを読んでいきたい。

複素関数の基礎

以降、領域は単連結で、閉曲線は単純閉曲線とする。厳密な議論はひとまず後回し。

 w,z複素数とすると、複素関数 w=f(z)と表せる。しかし実関数と異なるのは、 w z複素数であるため z=x+yi, w=u+viと書け( x,y,u,vは実数)、事実上4変数であることである。だから微分積分を何でもかんでも実関数と同じようにやればいいというわけではない。

さて、複素関数のかなり重要な性質「正則」について定義しておく。

関数 f(z)複素数平面のある領域の各点で微分可能なとき、その関数 f(z)はその領域で正則(regular)という。

この正則という条件、かなり強い。正則であることと同値な条件はまた記事にできればと思う。

コーシー・リーマンの関係式

 z=x+yi, f(z)=u+viとすると、 f(z)が正則関数であることの必要十分条件

 \displaystyle \frac{\partial u}{\partial x} = \frac{\partial v}{\partial y} , \frac{\partial u}{\partial y} = -\frac{\partial v}{\partial x}

である。

この式をコーシー・リーマンの関係式という。ここからラプラス微分方程式を導くことができる。

遠くこれを後世子孫に伝うる

ブログを開設して記事を投稿…の流れが小学校以来、10年ぶりくらい。

4月から大学院にて応用数学統計学)を専攻するので、

その勉強記録、研究記録、そして読書録にしようと思う。

あとはふと思いついたことを暇なときに書き留めるなど。

 

まずは、福沢諭吉『学問のすゝめ』より、気に入った言葉を引用しておこう。

 わが輩の職務は今日この世に居おり、わが輩の生々したる痕跡を遺こして遠くこれを後世子孫に伝うるの一事にあり。その任また重しと言うべし。 

生きた証を残してこそ人生だ。

事物の軽々信ずべからざることはたして是ぜならば、またこれを軽々疑うべからず。この信疑の際につき必ず取捨の明めいなかるべからず。けだし学問の要はこの明智を明らかにするにあるものならん。

情報を取捨選択するためには、知識がないといけない。そのために学問しようではないか。