数学書紀

応用数学と、読書記録。

【読書録】宇宙創成(上)

サイモン・シン『宇宙創成(上)』を読み終えた。

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

 

 プトレマイオスの天動説から、コペルニクスガリレオらによる地動説への大転換。

科学は理論と実験(観測)が表裏一体となって進展していくものだと、そのドラマに感動。何事もなさそうな小さな発見が、これまでの天文学を覆す大理論の支えになる。一気に読み進めてしまって、こんな知的好奇心をそそられる本はめったにない。

特に好きなものを2つ。

単純なものこそ真理

天動説を支持しようとすると、周転円を加えたり、惑星は複雑な運動をしているという仮定が必要になる。しかし地動説であれば、「惑星は太陽の周りをまわっている」の一言で惑星の逆行現象などが全て説明できてしまう。(なお、観測による結果と精密に合わせるには、楕円運動をしていることに気付かなければならないのだが…それはケプラーまで待たれる)

巨人の肩の上に立った巨人

井戸を掘って地球から太陽までの距離が分かった。

太陽の直径が分かった。

地球から月までの距離が分かった。

視差を利用して、恒星までの距離が分かった。

セファイド変光星の規則性を調べることで、恒星の明るさと距離の関係が分かった。

それにより、多くの星雲だと思われていたものが銀河だと分かった。

ドップラー効果を利用することで、銀河は銀河系から遠ざかっていることが示された。

 

この一連の大発見の上に、ハッブルは最後の「ハッブルの法則」と呼ばれる理論を発表した。この理論立てて問題を解決していくさまは、まさに科学そのものと言ってよいと思う。宇宙という壮大なスケールを相手に、これからの発展が楽しみである。鉄は熱いうちに…ではないが、さっそく下巻を読もう。